大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和44(あ)1077 決定

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人橘一三の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、刑訴法

四〇五条の上告理由にあたらない。

なお、職権をもつて調査するに、公職選挙法二二一条三項一号にいう「公職の候

補者」とは、同法の規定による正式の立候補届出または推薦届出により候補者とし

ての地位を有するに至つた者をいい、立候補を予定しているが、まだ正式の届出を

していない者を含まないと解すべきであつて、このことはすでに当裁判所の判例と

するところである(昭和四一年一二月二二日第一小法廷判決、裁判集刑事一六一号

六六九頁参照。なお、その他判例集一四巻二号一七〇頁、同巻一四号二二二一頁参

照。)。ところが、第一審判決は、被告人Aが同判示選挙について正式の立候補届

出をする以前であることの明らかな同判示第一および第三の各所為に対し、本来公

選挙法二二一条一項一号、五号のみを適用すべきであるのに、誤つて同条三項一号

をも適用しており、原判決もまたこの違法を看過しているのである。そして、この

誤りの結果、第一審判決における同被告人に対する処断刑の範囲にも差異を来して

いるのであるが、第一審判決の同被告人に対する罰金三万円の科刑は、もとより本

来正当な処断刑の範囲内にあるものであり、かつ、同被告人の本件犯罪事実、記録

上うかがわれるその情状、第一審判決の同被告人に対する右科刑および選挙権被選

挙権の停止期間の短縮の状況等本件事案の具体的事情をつぶさに検討すれば、右違

法は、いまだ第一審判決および原判決のうち被告人Aに関する部分を破棄しなけれ

ば著しく正義に反すると認めるには至らない。

よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、

主文のとおり決定する。

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昭和四四年一〇月二日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 大 隅 健 一 郎

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 長 部 謹 吾

裁判官 松 田 二 郎

裁判官 岩 田 誠

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